歩行を支え、骨盤を安定させる「見えないバランサー」。太もも内側を守る「内転筋群」の秘密

こんにちは。Space SOUのSayoriです。

本日は「身体の学び(Body Logic)」のシェアをさせていただきます。 今回のテーマは、太ももの内側にあり、私たちの歩行や姿勢を陰ながら強力に支えてくれる筋肉の集合体、「内転筋群(ないてんきんぐん)」です。

将来、皆さんがご自身で身体をケアしていく上でも、この筋肉の仕組みを知っておくことは一生の財産になります。解剖学に触れるのが初めての方にも、イメージしやすいように紐解いていきますので、ぜひご自身の身体の中を想像しながら読んでみてくださいね。

目次

内転筋群の「起始・停止(スタートとゴール)」

筋肉には、骨にくっついている「起始(スタート地点)」と「停止(ゴール地点)」があります。
内転筋群は1つの筋肉ではなく、「恥骨筋」「短内転筋」「長内転筋」「大内転筋」「薄筋」などの5つの筋肉が合わさったグループ名です。

<起始>
骨盤の前側の下部(恥骨や坐骨)

<停止>
大腿骨(太ももの骨)の内側全体
※「薄筋」のみ膝を越えてすねの骨(脛骨)へと繋がります(二関節筋)

これらの筋肉たちは、主に骨盤の下の方にある「恥骨」や「坐骨」と呼ばれる部分からスタートし、太ももの骨(大腿骨)の内側全体に広くくっついてゴールを迎えます。 実はこの内転筋群、すべて合わせると全身の筋肉の中でもトップクラスの大きさと体積を誇る、非常に巨大で力強い筋肉の集まりなのです。

また、グループの中で最も内側にある「薄筋(はっきん)」という筋肉だけは、股関節と膝関節の2つの関節を飛び越えて、膝下のすねの骨にまで繋がっています。そのため、膝を伸ばした状態ではすねの骨まで一緒にコントロールしてくれます。

豆知識
二関節筋とは、隣接する2つの関節をまたいで走行し、同時に2つの関節の動きに関わる筋肉のことです。1つの関節のみに作用する「単関節筋」に対して、エネルギーの伝達効率を高め、歩行などの複雑な動作をスムーズにする役割を持ちます。

日常の動作を支える「2つの重要な働き」

この巨大な筋肉グループの働きは、私たちの日常生活に欠かせません。大きく分けて2つあります。

① 脚を内側に引き寄せる(股関節の内転)

名前の通り、開いた脚を内側に引き寄せる働きをします。太ももの骨全体を内側方向へと動かしてくれる、非常に力強い筋肉です。

② 前後の動きをサポートし、脚を「まっすぐ」に戻す(屈曲・伸展のサポート)

解剖学では正面から見ることが多い内転筋群ですが、実は「横」から見ると、スタートとゴールが「まっすぐな1本の棒」のように一直線上に並んでいます。

そのため、脚が前に振り出されているときは「後ろへ引っ張り」、脚が後ろにあるときは「前へ引き戻す」という役割を果たします。つまり、脚をまっすぐな直立状態(中立位)に戻す、振り子のような働きを持っているのです。

脚が前に振り出されているときは、「後ろへ引っ張る」

脚が後ろにあるときは「前へ引き戻す」

Sayoriの身体の答え合わせ(解説)

Sayori

このように、内転筋群はただ脚を閉じるだけでなく、私たちが歩くときに前後のバランスを取り、脚をまっすぐに戻す振り子のような役割をしてくれています。つまり、歩行動作においては常に休むことなく働き続けている頼もしい存在です。

Sayori

でも、長距離を歩いたり、姿勢が崩れたまま日常を過ごしたりしていると、歩行をサポートし続けるこの筋肉は疲労状態に陥ってしまいます。また、太ももの外側の筋肉ばかりを使って内側がサボってしまうと、内転筋群は常にストレスを受け、しなやかなゴムのような弾力を失って『過労筋(ガチガチの紐)』になってしまいます。

内転筋群がこわばる(サボる)とどうなる?

歩行時に常に働いている内転筋群が疲労してこわばったり、逆にうまく使えずにサボり筋になったりすると、骨盤を安定させる力が弱まってしまいます。

その結果、脚が外側に引っ張られて「O脚」や「ガニ股歩き」になったり、太ももの外側がパンパンに張る原因にも繋がります。重たい大腿骨を支える巨大な筋肉だからこそ、硬くなると股関節の動きも窮屈になり、姿勢や歩くときのバランスに大きな影響を与えてしまうのです。

ガチガチの内ももを解放するためには?

内ももが硬く張っているなと感じたら、ただ強く外側から揉んだり、開脚などで痛いのを我慢して無理に引っ張ったりするだけでは根本的な解決になりません。筋肉の真ん中だけが無理やり引っ張られ、かえって関節の付け根を痛めてしまうこともあります。

大切なのは、無理に引っ張るのではなく、筋肉を「本来の長さ」に戻し、関節に心地よいスペースを取り戻してあげることです。 ケアをする際は、筋肉のスタート地点である「骨盤(恥骨や坐骨)」を強固な支点(アンカー)として安定させ、そこから太ももの内側、膝にかけて、筋肉の繊維にアイロンがけをするように丁寧に牽引(トラクション)をかけていく意識が大切です。

根元の骨をしっかり固定して関節の奥にスペースを創り出すことで、身体が「ここは安全だ」と安心し、過労でカチカチになった内ももが自ら優しくロックを解除して、本来のしなやかな弾力を取り戻していくのです。

まとめ:知識が未来の身体を創る

難しい名前や仕組みをすべて暗記する必要はありません。 ただ、「私の太ももの内側で、骨盤から大腿骨、そして膝下までを繋ぎ、歩くたびに脚をまっすぐに戻してバランスをとってくれている大きな筋肉たちがいるんだな」とイメージしてあげること。それだけで、身体の使い方は少しずつ心地よい方向へと変わっていきます。

ご自身の身体の中にある「見えないバランサー」の存在を、ぜひ時々感じてみてくださいね

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