間接照明の魔法
夜、部屋の照明を少し落として、
ほんのりオレンジ色の光の中で過ごすだけで、
心がそっと、静かにほどけていくのを感じたことはありませんか?
照明は、インテリアの中でも「雰囲気を演出するもの」と思われがち。
けれど本当は、
”体と心のリズムを整えてくれる、“もうひとつのセラピスト”のような存在です。

私たちの体は、
長い時間をかけて自然のリズムと共に生きるように設計されてきた。
太陽が高く昇る昼間は活動の時間。
日が沈み、炎の揺らめく夜は、静かに心を鎮めていく時間。
でも、現代は違います。
パソコン、スマホ、コンビニ、オフィス。
どこもかしこも、青白い光が当たり前のように溢れている。
その光の刺激によって、
体内リズムを整えてくれるホルモンの分泌が抑えられてしまい、
「眠りたいのに眠れない」「ぼんやり疲れが取れない」…そんな感覚が生まれてしまうことも。
だからこそ、
夜にはオレンジ色の光を取り入れることが、とても大切。
それは、
太陽が沈むときの光、
キャンドルやたき火の炎、
心を落ち着かせる、古来の安心感に満ちた光。
私が間接照明に惹かれる理由は、
そのやわらかさ、だけではありません。
“明るすぎないことで、世界の情報が絞られる”という体験が、
心にも静けさを与えてくれるから。
間接照明に切り替えたばかりの頃は、
「ちょっと暗いかな?」と感じるかもしれない。
でも、慣れてくるとその“情報量の少なさ”こそが、
脳にとってのやさしい休息になる。
例えば、ペンダントライトやフロアランプを視線よりも低い位置に配置する。
それだけで空間の重心が下がり、自然と呼吸も深くなる。
心がそわそわしている日も、
照明をひとつ灯すだけで、
まるで小さなオアシスがそこに生まれる。


そして思うのです。
本当に整った空間とは、
完璧に片付いた部屋でも、洗練されたデザインでもなくて、
自分の心が深くくつろげる場所なんだって。
間接照明のやさしい光の中にいると、
自分に話しかける声も、自然と静かになっていく。
「今日はこれでいいよ」「おつかれさま」って、
そんな風に、自分をゆるす時間が始まるのです。
特に、心の中を見つめ直したいときや、
何かを決めたい夜には、
真っ白な天井照明より、ふわっとした光のほうがずっと似合う。
お気に入りのランプを灯しながら、
湯気のたつお茶を片手に、
少しだけ深呼吸してみる。
きっと、あなたの心にも“本来の自分”がそっと戻ってくるはず。
照明は、空間を飾るものではなく、
「時間の質」を変えるもの。
夜の静かなオアシスに、
あなただけのやさしい光を灯してみてください。
